大橋宗桂(九代)筆と推定される十代将軍徳川家治実戦集。家治公は大の愛棋家将軍として知られ棋級七段。真の実力としてはさすがに疑問ではあるが、家元衆よりきちんと指導を受けているからか、将棋は筋良く形も綺麗である。伊藤看寿といえば詰将棋図式集の最高峰とされる将棋図巧≠フ作者の名が真っ先に浮ぶところだが、本局の対戦者はその息子二代看寿五段。
看寿の居飛車に、家治公は四間飛車から4五歩と角筋を通す作戦。29手目3五歩から5歩の仕掛けはこの形の手筋。以下なかなか見応えのある手順が続くが、59手目5四桂と両取りに打てて看寿やや優勢か。しかし決め手となるとなかなか難しく、67手目9五歩では5三角と寄せに行きたいが5一金寄で容易でない。が以下3四歩、2四角、2六角成の様にもたれて指すのが勝ったかも。77手目5三銀は疑問で、単に竜を逃げておけば後の7四桂打が両取りになってはっきり得。どうもこの辺は上様≠ェ相手なので少々緩めている感じである。まあ今日でも稽古将棋で、素人を本気で負かしにかかるプロがいないのと同様でこれは当然のこと。97手目6三竜まで駒をたくさん渡してどうぞ詰めて下さいと言ったところか?これに答えて家治公も、受けても勝ちだが8六桂からしっかり詰ませたのはお見事。天下の将軍の決して殿様芸ではない実力が感じられる。