第四十二局 将棊粹金 下 より
中嶋大藏 ― 伊藤宗印(五代)戦
江戸の人中嶋大藏は七段で、福嶋順喜と同様に真にその実力があった
とされる人物。伊藤家当主宗印とも平手の対戦である。
居飛車対向い飛車の戦型から、33手目6六歩で持久戦模様へ。46手目
3五歩からの歩交換に3六歩では3四飛で先手つまらない、2四歩の反発
は気合だろう。以下桂香を取り合って2五飛とぶつけた局面はまず互角の
形勢か。大藏は9八香打と端を補強しつつ反撃を見、宗印は8四桂で玉頭
に狙いを定める。
8六歩は怖い手だが一歩も引かぬ構えで、さすが高段者同士の対局だけ
あってこの辺りの手順は見応えがある。62手目7五歩から玉頭戦に突入、
8七桂から7五歩と飛角の効きを止めて凌ぐ大藏に、宗印は守りの金を繰り
出して攻めを続ける。
7筋での金桂交換から84手目8五飛と切って寄せ切れるかどうかの終盤
戦だが、次の6八歩が意表を突く一手。普通は玉頭戦だけに同金直で手厚
くさせて損に思えるが、7五桂から8七金と打ち込んだ局面を見ると玉の逃
げ道が大幅に制限されているのが分かる。読みの入った妙手であった。
92手目6七桂成から7五桂と厳しく追及し宗印の勝勢。103手目8四歩
で6八玉とかわしても4七金で、8六角を見られて受けにくい。6九金以下
は手堅い寄せで、宗印が家元の貫禄を示した一局であった。