下手 大橋英俊 ― 上手 伊藤定次郎 (左香落)戦文化十三年八月

伊藤定次郎は六代宗看の次男で後の看佐、七段まで昇り次期名人
候補の資格充分だったが父に先立ち若くして世を去った。

 左香落ちで3四銀型は上手の代表的な戦法の一つ。16手目1四歩の
仕掛けはいくら何でも急ぎ過ぎで、今日では7八玉〜5八金右〜4六歩
としてから4五歩、同銀、1四歩が定跡となっている。23手目2五桂では
1二飛で良かった、放っておけば2五桂だし1八飛には1五香がある。

 1三歩成とと金ができては容易ではない、3二金で2四歩は2三歩の
垂らしが厳しくなる。3六歩から手順に桂を取り返して下手の軽い形。
34手目2五桂は1五角と先手で逃げられ損のようだが、以下2四銀に
1七桂まで次に1六歩の角取りを見て充分。読みが入っている。

 上手45手目3五銀打から必死の粘りだが、48手目6五角がまたまた
好手。8三角成りを受ければ4三角成、同飛、3四飛、3三歩、4四飛で
一気の寄せを見ている。辛い5四歩に馬を作ってますます好調、8六歩
から8七香は上手唯一の反撃手段だ。

 60手目7八金は少々筋悪で、当然7八玉、8八香成、同銀としたい。
63手目5五歩は6五馬を呼びこんで負けを早めた。6二玉等辛抱する
べきだっただろう。5四香が当然ながら痛打で、3六歩から今度は銀を
いじめに行く。75手目3七銀成は自爆気味だが仕方が無い。
 
 90手目7七玉と安全を帰して、8筋の歩を伸ばしてじっくり寄せる。
少々もどかしい感もあったが最終8七玉まで、上手手段に尽きての
投了となった。