§40.8五飛戦法
「3三角戦法」の後編です。
前回の△8四飛型も非常に優秀な作戦でしたが、今では使う人が少なくなってきました。これは特に△8四飛型に欠陥があったという訳ではなく、新しく現れた「△8五飛戦法」への人気が集中したからです。
ではその圧倒的支持を得た戦法とはどんなものでしょうか?

同じように序盤の駒組みから見ていきましょう。
(第1図は△4一玉まで)
冒頭図からの指し手

△3三角 ▲3六飛
△2二銀 ▲8七歩
△8五飛 ▲2六飛
△4一玉 (第1図)
★CHECK★
8五飛戦法のスタート。前回との違いは後手の飛車と玉の位置。
★8五飛戦法の基本図★
▲3六飛は前回解説したことと同じ意味。後手は先に△2二銀と上がります。
ここで▲8七歩と打ちましたが、この歩を保留する指し方もあるので
MEMOで紹介しましょう。
△8五飛と1マスだけ引くのが「8五飛戦法」における後手の飛車の定位置です。
次に△2五飛と回られないように先手は▲2六飛と寄っておきます。
よく見れば先手側の指し手は前回と変わりありません。
違うのは後手側の飛車と玉の位置、しかしこれが結構柔軟性のある陣形なのです。
(第2図は▲4八銀まで)
第1図からの指し手

▲5八玉 △6二銀
▲3八金 △5一金
▲4八銀 (第2図)
★CHECK★
第1図で▲3三角成△同桂▲9六角には△6五飛。以下、手は尽くしても先手有利までには至らない。
★中原囲い★
ここからお互い囲いに入りますが、後手の指し手に注目して下さい。
△4一玉の後、△6二銀〜△5一金とします。
この形は中原誠永世十段が得意としていた構えで
「中原囲い」という名称が付いています。
金・銀の連結がシッカリしていて急戦にも強い。横歩取りの中ではかなり堅い囲いです。
更にもう少し進めてみます。
(第3図は△7三桂まで)
第2図からの指し手

△7四歩 ▲3六歩
△7三桂 ▲3七桂 (第3図)
★CHECK★
遊び駒を作らないことが大事。
桂馬も必ず活躍させよう。
★中住まい型
  →ここからの攻防は第8図へ
★右桂を活用する★
△7四歩〜△7三桂と右桂を跳ねて駒組みは完成。
この後は飛車・角・桂馬をフル活用させて戦います。

また、先手の陣形は第3図の「中住まい」以外にも右の図のような組み方があります。
★5八玉・3八銀型
  →ここからの攻防は第4図へ
★6八玉・3八銀型
  →ここからの攻防は第6図へ
★MEMO(8七歩保留型)★
▲8七歩を打たない指し方もある。
代わりに▲3八金と上がり△4一玉▲5八玉(参考図)。
この後も▲3三角成〜▲8八銀として、なるべく8七に歩を打たない方針で進めていきます。
△8五飛の形を作らせないのが目的で、恐い変化もありますが先手としては有力な作戦です。
後手側は▲8七歩の変化と併せて勉強しておきましょう。
(参考図は▲5八玉まで)
【8五飛戦法のポイント】
(第4図は△7四歩まで)
第4図からの指し手

▲3五歩 (第5図)
★CHECK★
将棋のセオリーとして「歩得したら、その得をした筋の歩を伸ばしていく」というのがあります。
つまり先手は3筋で歩得したので▲3六歩〜▲3五歩と突いていくのが筋だという意味です。
★3筋の歩について★
先手が3筋の歩を突いていくのは有力な手段。
この歩が▲3四歩まで進み3三の地点を攻める展開になれば先手としては理想的です。もちろん後手はそれを簡単に許してはいけません。
そういう意味で▲3五歩は局面の流れを決める重要なポイントとも言えます。
第5図は最も早い段階で▲3五歩と突いたケース。
一見△同飛と取られそうですが角交換からの▲4六角と打つ狙いを含んでいます。
後手としてはどうやって受けて立つのが良いでしょうか?
(第5図は▲3五歩まで)
★MEMO(取る手もある)★
意地悪な書き方でしたが実際は△3五同飛と取っても難しい形勢です。
また、第5図では他に△7三桂、△2五歩、△8八角成なども有力。一度研究してみて下さい。
(第6図は▲4六歩まで)
第6図からの指し手

△7五歩 ▲同歩
△同飛 (第7図)
★CHECK★
本譜は単に△7五同飛と取ったが、いきなり△7七歩や△8六歩の攻めも有力。
★7五歩について★
7三桂を活用する意味で△7五歩と突く手はよく現れます。
駒がぶつかると手拍子で取ってしまう人も多いですが、この歩に関しては慎重に考えなければいけません。少なくても本譜の▲7五同歩は疑問手に近いと言えます。
理由は△7七歩の叩きを中心とした後手の攻めが早くなってしまうからです。
しかし放置したままで△7六歩と取り込まれるのもかなり厳しい手なので、先手としては△7五歩はかなり頭を悩ませる局面です。
(第7図は△7五同飛まで)
★MEMO(攻め合いを目指す)★
解説で記した通り▲7五同歩は後手の攻めが早くなるので良くありません(第7図は後手不満なし)。
△7五歩に対しては飛車の横利きが止まったので、この瞬間に▲3三角成△同歩▲3五歩(もしくは単に▲3五歩)とするのが有力。
これなら後手の△7六歩に競り負けしない攻めが期待できます。
(第8図は▲1六歩まで)
第8図からの指し手

△8八角成 ▲同銀
△4四角 ▲2九飛
△1五歩 (第9図)
★CHECK★
第8図の▲1六歩では▲4六歩と突いておくぐらいが無難。
★端歩について★
第8図は上記の第3図から△1四歩▲1六歩と突きあった局面です。
何気ない端歩の交換ですが既に先手陣に隙が生じています。
△8八角成〜△4四角が厳しい角打ち。
形良く▲2九飛と引いた手に対して△1五歩と突きます。
第9図で▲1五同歩は△1八歩▲同香△1七歩。
ハッキリ優勢とまではいきませんが仕掛けは成立しています。
このように端の付き合いが攻めを誘発させる例もいくつかあるので注意しましょう。
(第9図は△1五歩まで)
最初は奇手のように見られていた「8五飛戦法」も、その後の研究と実戦の成果からタイトル戦にまで現れるようになりました。
平成11年には第26回将棋大賞・升田幸三賞を受賞(創案者・中座真五段)。今でもその人気は衰えることがありません。
※8五飛戦法について詳しく知りたい方は「横歩取り△8五飛戦法」、「谷川の21世紀定跡・第2巻」を参照して下さい。


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