§32.ゴキゲン中飛車
(第1図は▲2六歩まで)
今、将棋界ではアマ・プロ共に中飛車を使う人が増えています。
そのブームの火付け役となったのが近藤正和五段。
彼の人柄にちなみ「ゴキゲン中飛車」と名付けられたこの戦法は、第29回将棋大賞(平成14年)で「升田幸三賞」を受賞。
また、谷川王位が1000勝を達成した将棋がこの戦法だったことも記憶に新しいと思います。

では、ゴキゲンの世界を少しだけ覗いてみましょう。
(第2図は△5二飛まで)
第1図からの指し手

 △5四歩  ▲2五歩
 △5二飛  (第2図)
★CHECK★
▲2六歩に△5四歩と突くのが大事なポイント。
▲2二角成△同飛▲5三角には△4二角と打ち返して大丈夫。
★4手目に△5四歩★
まだ4手目ですが、第1図で△5四歩と突くのが今までの中飛車と違うところ。
中飛車側はこのまま角筋を止めない方針で進めます。
▲2五歩に△5二飛と回って第2図。

ここで居飛車は大きな分岐点になります。具体的には
  (A)超急戦型(▲2四歩、▲5八金右)
  (B)急戦型(▲4八銀、▲6八玉)
  (C)持久戦型(左美濃、居飛車穴熊)
  (D)力戦型(▲2二角成、▲7八金)
の4パターン。そのいずれにも対応できるのがゴキゲン中飛車が優秀と言われる理由です。
全部は解説できませんので、本編では(A)、(D)について見ていきます。
※(B)、(C)はMEMOを参照して下さい。
(第3図は△3三角まで)
第2図からの指し手 (1)

 ▲2四歩  △同歩
 ▲同飛   △8八角成
 ▲同銀   △3三角  (第3図)
★CHECK★
△3三角のところ、△2二銀も有力。
★A・超急戦型▲2四歩★
第2図で焦点となるのは▲2四歩。
これで問題なければ居飛車が指せます。
当然△同歩▲同飛車の後、振り飛車は反撃。それが角交換からの△3三角です。
第3図からは
  ・▲2一飛成△8八角成
  ・▲2八飛△2六歩
のどちらかを選ぶことになります。
居飛車はまずこの変化について研究しておきましょう。
★MEMO(B・急戦型の一例)★ (参考1図は▲4六銀まで)
第2図で(B)急戦型を選ぶと、振り飛車は△5五歩から位を取ってきます。

位を取られたまま収まると振り飛車の作戦勝ちになり易いので、居飛車は動いていかなければなりません。
参考1図は居飛車が▲3七銀〜▲4六銀と素早く銀を進出させた局面。
▲3五歩などで角頭を狙う作戦ですが、振り飛車も△6五銀〜△5六歩と強気に対抗して十分戦えます。
(第4図は▲2四同飛まで)
第2図からの指し手 (2)

 ▲5八金右 △5五歩
 ▲2四歩  △同歩
 ▲同飛   (第4図)
★CHECK★
今、最も研究されてる形。
激しい戦いで優劣もハッキリしていない。
★A・超急戦型▲5八金右★
居飛車が▲5八金右と上がった変化です。
これに対して振り飛車は△5五歩と伸ばしてきます。
この5筋の位を取る△5五歩がこの戦法のポイントとなる一手で、常に△5六歩と突く手を狙うことができます。
また、すぐに△5五歩と突かない作戦もありますが、この辺りは好みと言って良いでしょう。
(第5図は▲5五桂まで)
第4図からの指し手

 △5六歩  ▲同歩
 △8八角成 ▲同銀
 △3三角  ▲2一飛成
 △8八角成 ▲5五桂  (第5図)
★CHECK★
第5図はウッカリ△5四銀と打つと、▲3三角から桂馬で王手して8八馬を抜かれるので注意。
★定跡最前線★
振り飛車は△5六歩と突き捨てた後、先程と同様に飛車・銀両取りをかけて反撃します。
但し、この場合は金が5八にいる為、居飛車は△3三角に▲2一飛成と踏み込んでいくしかありません。
そしてもうひとつの違いが▲5五桂。
この桂馬が急所に打てるので銀・桂交換の駒損ですが互角に勝負になります。
第5図は△6二玉と上がるのが最善手で、これに対して
  ・▲1一竜   ・▲2三角  ・▲7五角
など選ぶ展開になります。
★MEMO(C・持久戦型の一例)★ (参考2図は△6三金まで)
(C)持久戦型を選んでも、振り飛車は△5五歩からの位取りです。

参考2図は居飛車が左美濃に囲った形ですが、少なくとも振り飛車にとっては不満のない局面だと言えます。
この後は、△5四銀が働く展開を目指せば良いでしょう。

やはり位取りがうまく収まると振り飛車が作戦勝ちし易くなります。
(第6図は△3二金まで)
第2図からの指し手 (3)

 ▲7八金  △5五歩
 ▲2四歩  △同歩
 ▲同飛   △3二金  (第6図)
★CHECK★
△5五歩とせずに△6二玉から囲いを目指す手も有力。
その場合▲2四歩△同歩▲同飛に対しては△2二飛とぶつける狙い。
★D・力戦型▲7八金★
▲7八金は変わった手ですが△3三角の飛車・銀両取りにならないよう先に受けた意味。
これに対しては一度△3二金とおとなしく受けておきます。
しかし、振り飛車側にも反撃策が用意されているので次譜で見ていきましょう。
(第7図は△2三歩まで)
第6図からの指し手

 ▲4八銀  △3五歩
 ▲6九玉  △6二玉
 ▲6八銀  △7二玉
 ▲2八飛  △2三歩
 ▲6六歩  △8二玉
 ▲4六歩  △7二銀
 ▲4七銀  △5四飛  (第7図)
★CHECK★
定跡とまでは言えませんが、大体このような感じで駒組みが進みます。
最後の△5四飛に注目。
★振り飛車、さばきを狙う★
長い手順になりましたが、これはひとつの進行例と見て下さい。
▲7八金の効果で居飛車は2筋の歩をすんなり交換できましたが、反面王様を囲いにくいという欠点があります。
そこで振り飛車の作戦としては△5四飛と浮いた後、飛車・角を軽くさばいて戦おうという作戦が有力です。
例えて言えば「§18.立石流」、「§25.升田式石田流」に近い感覚で指し進めれば良いでしょう。
★MEMO(D・力戦型▲2二角成)★ (参考3図は▲2二角成まで)
最後に▲2二角成の変化について触れておきましょう(参考3図)。

厳密には居飛車の1手損になりますが、互いに角を持ち駒にして完全な力将棋になります。
ここからどのように進むかは指す人によって違いますが、振り飛車としては△2二同銀とした後△3三銀〜△4四銀と進める変化や、△2二飛と回り向かい飛車で逆襲する展開が有力でしょう。
「ゴキゲン中飛車を使い始めて勝率がアップした」というアマチュアの声もよく聞きます。
居飛車党の人はひとつでも多く対抗策を用意しておきましょう。ゴキゲンブームはまだまだこれからも続きそうです。


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