特別編・カニカニ銀
児玉孝一七段 第30回「将棋大賞」において、関西本部所属の児玉孝一七段が「升田幸三賞」を受賞しました。
升田幸三賞は、偉大なる天才棋士・(故)升田幸三実力制第四代名人の残した「新手一生」という精神の下、その言葉に相応する画期的な戦法と、その創案者に与えられる名誉ある賞です。

今回は特別編と題して「カニカニ銀」がどういう戦法かを見ていきましょう。
【カニカニ銀の序盤】
まずは駒組みから。セオリー無視(?)の珍形です。
右図が「カニカニ銀」の完成図で、序盤はこの形を目指して進めます。
二枚の銀を4段目に繰り出し、飛車を中央に振り、角を端に上げて、桂馬を跳ねる。
これで駒組みはOKです。

狙いは当然5筋。「飛・角・銀・銀・桂」をフル活用して一気に中央突破を狙います。

さて、守りの方はと言うと、玉と金が一歩も動いていませんね。
実はこれがカニカニ銀の不思議なところで、この位置が最善形なのです。

単純明快なのでビギナーでもすぐ覚えられるでしょう。
(カニカニ銀の完成図)
★3つのポイント★
<矢倉の出だし>
まず最も重要なのが、初手から
▲7六歩△8四歩▲6八銀△3四歩▲7七銀(第1図)
と進めること。
この5手が「矢倉戦法」の出だしであり、「カニカニ銀」に組むための絶対条件です。
(第1図は▲7七銀まで)
<先に2筋を伸ばす>
第1図の後、
△6二銀▲2六歩△4二銀▲2五歩△3三銀(第2図)
と、2筋の飛車先を伸ばしていきます。
3三銀の形を強要して、後手の角道を止めつつ、5筋を少しでも薄くする意味です。
▲2六歩のところ、▲4八銀と上がるのは△8五歩▲7八金となって「カニカニ銀」にできなくなるので要注意。
(第2図は△3三銀まで)
<素早く銀を繰り出す>
第2図以下、
▲4八銀△3二金▲5六歩△5四歩▲5七銀△4一玉▲4六銀(第3図)
と、右銀を4六の地点まで繰り出していきます。
これで攻撃準備は完了です。
後は、冒頭の完成図を目指して進めていけば良いでしょう。
場合によっては早目に▲5五歩△同歩▲同銀としても構いません。
(第3図は▲4六銀まで)
★MEMO(名前の由来)★
この「カニカニ銀」の名付け親は森信雄六段。
2枚の銀の動きが2匹の「蟹(カニ)」を連想させたことが理由だとか。
【カニカニ銀の戦い】
究極の二枚銀戦法。その破壊力を鑑賞しましょう。
(第4図は△3一角まで)
第4図からの指し手

 ▲5五歩  △同歩
 ▲同銀   △5四歩
 ▲5三角成 △同金
 ▲5四銀  △同金
 ▲同飛   (第5図)
★CHECK★
第4図は普通に後手が矢倉囲いを目指した形。
角切りの猛攻で「カニカニ銀」優勢。
★実戦例・その1★
5三銀・3一角が中央への備えになっていますが、それでもカニカニ銀は▲5五歩から仕掛けていきます。
△5四歩までは一本道の手順で進み、ここで▲5三角成と切るのが鋭い踏み込み。
△同角・△同金どちらで取っても▲5四銀と出ていきます。
第5図は歩切れの後手が受けに窮していて「カニカニ銀」優勢です。
(第5図は▲5四同飛まで)
(第6図は△4一玉まで)
第6図からの指し手

 ▲5五歩  △同歩
 ▲6五桂  △6四銀
 ▲5五銀右 △同銀
 ▲同銀  (第7図)
★CHECK★
第6図は3三銀を△4二銀左と引き、中央を厚くした構え。
5筋を突き捨てて桂馬を跳ねるのが軽快な手順。
★実戦例・その2★
この形でもやはり▲5五歩と仕掛けていきます。
これに対して△6四歩なら、▲5四歩△同銀▲5五銀右と攻めて先手十分です。
5筋を突き捨ててから▲6五桂と跳ねるのが好手。
△6四銀(または△5四銀)と逃げますが、▲5五銀右とぶつけていけば中央の勢力が勝る分「カニカニ銀」側が優勢です。
(第7図は▲5五同銀まで)
(第8図は△9四歩まで)
第8図からの指し手

 ▲5五歩  △同歩
 ▲7五銀  △9五歩
 ▲5五銀  △9六歩
 ▲5四歩  (第9図)
★CHECK★
△6四歩は▲6五桂を消しつつ、角筋を緩和した手。
▲7五銀と出るのが好判断で「カニカニ銀」が指せる。
★実戦例・その3★
△6四歩はよく現れる手ですが、逆に▲7五銀と出て6四の地点を狙うのが好手。
本譜は後手が端攻めで9七角を狙っていますが、▲5五銀〜▲5四歩と進めれば、玉に近い分「カニカニ銀」側の攻めの方が厳しいのが明らかです。
第9図で△9七歩成なら▲5三歩成〜▲6四銀左として「カニカニ銀」優勢。
また、△6二銀なら一度▲8八角と引いて、次に▲6四銀左を狙えば十分です。
(第9図は▲5四歩まで)
★MEMO(その他の形)★
中央攻撃ばかりが「カニカニ銀」ではありません。
参考図は7九角と引いて▲3五銀〜▲2四歩を狙っていく作戦です。
「二枚銀急戦矢倉」と似たような感じの攻め筋で、やはり4六銀の素早い動きがポイントとなります。
もし後手が△5四歩を突かないで待機していた場合、この作戦に変更すれば良いでしょう。
(参考図)


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