§53.角換わり腰掛け銀
いよいよ「角換わり腰掛け銀」の登場です。
四間飛車編、相掛かり編で登場したお馴染みの▲5六銀の形。
今回は角換わりでの駒組みになります。
棋界情報に詳しい方ならご存知でしょうが、昨年の春頃からこの戦法が再び流行り、いわゆる「第三次腰掛け銀ブーム」が起こりました。昭和20年代から長年の時を経て、尚も研究され続ける腰掛け銀。果たしてそれはどのような戦法でしょうか?
(第1図は△5四銀まで)
冒頭図からの指し手

▲3八銀 △7二銀
▲4六歩 △6四歩
▲4七銀 △6三銀
▲5六銀 △5四銀 (第1図)
★CHECK★
▲5六銀が腰掛け銀の定位置。
★腰掛け銀の定位置★
まずは「駒組み編」ですが、ここではビギナー向けに難しい駆け引きの部分は考えないことにします
本格的な戦いが始まるまで陣形の完成のみに目を向けて進めていきましょう。
「腰掛け銀」と言えば▲5六銀の形。やはりこれは角換わりでも同じことで、ここが定位置になります。
銀を中央に備えているだけに攻めにも守りにも使えるのが特徴で、非常にバランスの良いポジションなのです。
第1図までは特に難しいところはないでしょう。
(第2図は△3一玉まで)
第1図からの指し手

▲9六歩 △9四歩
▲1六歩 △1四歩
▲6八玉 △4二玉
▲5八金 △5二金
▲7九玉 △3一玉 (第2図)
★CHECK★
端歩は突くタイミングが難しいが、9筋は玉の懐が広くなり、1筋は攻めの幅が広がるので突いておくとメリットも多い。
★端歩と玉の位置★
さて「端歩」についてですが、大体の意味はCHECKに記した通りです。
高段者同士の戦いになると「間合いを計る」という意味合いも出てきますが、どのタイミングで突くかはプロでも判断が難しい。
ただ▲1五歩や▲9五歩など端を大きく突き越した形になるとかなり大きなプラスにはなります。
そのため殆どの実戦では△9四歩や△1四歩と素直に突き合う例が多いようです。
そして次に「王様の位置」ですが、これは第2図のように▲7九玉(△3一玉)まで移動させるのがベスト。
できれば▲8八玉(△2二玉)として入城したいのですが、この場合は相手が玉頭から攻めてくるので一概に良しとも言えません。
この辺りが序盤早々ビギナーを悩ませると思います。
あまり難しく考えずに第2図の形を覚えておいてもらえれば十分です。
(第3図は△4四歩まで)
第2図からの指し手

▲3六歩 △7四歩
▲3七桂 △7三桂
▲6六歩 △4四歩 (第3図)
★CHECK★
この辺りも手が広い。
変化1図のように位を取る手も有力。
★形いろいろ★
第2図からどう指すか各自の「好み」。
本譜は先後ともに同じように進めましたが、時折▲4五歩や△6五歩と位を取る実戦例もあります(変化1図)。また、金の位置も5八に代えて4八や4七にする形もあり、この辺りは非常に細かい部分の良し悪しを考えて指し手を選ぶことになります。

冒頭図から駆け足で進めましたが「これが最善」という構えはありませんから、とりあえず第3図の局面は「参考」という見方にしておいて下さい。
(変化1図は△6五歩まで)
★MEMO(選ぶ作戦は人それぞれ)★
上記の手順は先手・後手ともに腰掛け銀に進めていましたが、これは「同じ形に進めなければならない」という意味ではありません。
どちらか一方が「棒銀」や「早繰り銀」の作戦を選ぶ実戦もあります。
参考図は先手の早繰り銀、後手の腰掛け銀の実戦から。
先手は▲3五歩から銀を前進させるのが狙い。それに対して後手は△4四歩〜△4五歩と突いて反発しようとしています(銀を3五に出させない意味)。
もちろんこれは一局で、これからの将棋です。
今まで「棒銀」、「早繰り銀」、「腰掛け銀」と紹介しましたが、自分の好きな戦法を選んでマスターしていって下さい。
(参考図は△4四歩まで)
(第4図は△2二玉まで) 【木村定跡】

第3図からお互いの玉が▲8八玉△2二玉と入城した局面。
この形では「木村定跡」と呼ばれる有名な手順があります。
チョット難しい内容になりますが、この戦法を扱うなら知っておいてほしい変化です。
是非、盤に並べて研究して下さい。

※創案者は木村義雄十四世名人。その完璧に近いほどの緻密な攻撃から命名され、今現在でも「先手有利」の説で通っています。
(第5図は▲3五歩まで)
第4図からの指し手

▲4五歩 △同歩
▲3五歩 (第5図)
★CHECK★
▲3五歩が急所の歩突き。
★仕掛けの3手★
▲4五歩△同歩と突き捨ててから▲3五歩が「腰掛け銀」の仕掛けです。
特にこの▲3五歩がポイントとなるところで、ここを単に▲4五同桂などでは△4四銀と上がられて効果がありません。3筋の歩を突く捨てておくことによって後に▲3三歩などの余地が残り攻めに迫力が増すのです。
ちなみに第5図で△3五同歩と取れば今度こそ▲4五桂と跳ね、以下△4四銀▲2四歩△同歩▲同飛(変化2図)で「十字飛車」が決まります。
(変化2図は▲2四同飛まで)
(第6図は▲2八飛まで)
第5図からの指し手

△4四銀 ▲7五歩
△同歩 ▲2四歩
△同歩 ▲同飛
△2三歩 ▲2八飛 (第6図)
★CHECK★
7筋を突き捨てたのが好着想。
歩が手に入れば▲7四歩が狙い。
★7筋にキズを作る★
▲3五歩を取るのは先手が良くなるので、後手は△4四銀と上がって受けます。
これに対して手拍子に▲3四歩と取ると△3六歩と打たれてシビれます。
なので先手は2筋の歩の交換に目を向けますが、その前に7筋の歩を突き捨てるのが好手。
第6図まで進めば分かると思いますが、歩を持ち駒にして次に▲7四歩を狙います。
(第7図は▲2五桂まで)
第6図からの指し手

△6三角 ▲1五歩
△同歩 ▲1三歩
△同香 ▲2五桂 (第7図)
★CHECK★
今度は1筋を攻める。
ここから一気に勝勢。
★端を攻めて先手良し★
さすがに▲7四歩と打たれると後手は苦しくなります。
よって何か受けなければいけませんが△6三金と上がるのは▲7四歩△同金▲4一角と急所に打たれて先手が指しやすい(変化3図)。
本譜の△6三角の方がシッカリした受けですが▲1五歩から端の攻撃に踏み込むのが好手。1三の地点まで香車を吊り上げて▲2五桂と跳ねる手が軽快な手順です。これで次に▲3四歩と取り込めれば相当厳しい攻めになります。
これが「木村定跡」の手順で、後手は殆ど変化する部分なく先手良しになります。
第7図以下は更に続きがありますが、難しくなるので勉強熱心な方は定跡書などを参考にしてもらえば良いでしょう。
(変化3図は▲4一角まで)
★MEMO(定跡最前線)★
もう一度第3図に戻ります。
ここで▲8八玉△2二玉と進めば「木村定跡」で先手良しになるのが分かりました。
しかし厳密には▲8八玉は悪手です。
何故なら第3図で▲8八玉と入城すると今度は後手の方から△6五歩▲同歩△7五歩と反対に仕掛けられてしまうからです。
よって先手としては第3図で仕掛けに踏み込む方が良いのです。
実際、プロのタイトル戦でも現れるのはこの局面で以下はやはり▲4五歩△同歩▲3五歩と動いていきます。
この場合は王様の位置が7九・3一なので簡単には攻略できません。
プロも注目してる第3図。果たしてその研究合戦の末路はいかに?
(再掲第3図は△4四歩まで)
おそらく角換わり将棋の中ではこの「腰掛け銀」が最も難易度が高いでしょう。
しかし難しい戦法ほどマスターすれば強い武器になります。敬遠しないで試してみようという気持ちが大事です。
※角換わり腰掛け銀について詳しく知りたい方は「谷川の21世紀定跡1」、「羽生の頭脳7」を参照して下さい。


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