§62.矢倉中飛車
「急戦矢倉」について見ていきます。
急戦矢倉は早目に攻撃態勢を築いて積極的に主導権を奪っていくのが狙いで、囲いに関しては金矢倉よりもやや薄くなりますが、その分攻撃面で戦果を上げることが重要視されます。
今週紹介するのは「矢倉中飛車」。文字通り、矢倉の出だしから中飛車にスイッチする急戦矢倉の中でも一番採用率が高い戦法です。
★MEMO(急戦矢倉は後手番の戦法)★
一概には言い切れませんが、「急戦矢倉」は主に後手番の戦法です。
何故なら「急戦矢倉」は2二角のラインを生かして攻めていくことがポイントになるからです。
先手側の組み方だと7七銀、6六歩が角筋を止めているので急戦に進めることはできません。
後手番矢倉でも積極的に攻めたい!という方は是非参考にして下さい。
【矢倉中飛車の仕掛けまで】
まずは矢倉中飛車の組み方と仕掛けまでの流れを見ます。
(第1図は△5二飛まで)
冒頭図からの指し手

△6四歩 ▲7八金
△6三銀 ▲6九玉
△5二飛 (第1図)
★CHECK★
「中飛車」と言うからには当然△5二飛が定位置。
★中央に飛車を転回★
△6四歩〜△6三銀〜△5二飛が「矢倉中飛車」の駒組みです。
同じ△5二飛と進めるために△5三銀右〜△6四銀〜△5二飛という手順も考えられますが、この「矢倉中飛車」は6筋が急所で、将来△6四歩〜△6五歩という仕掛けが中心になってきます。ですから本譜の方が無駄がなくて破壊力のある組み方なのです。
更にもう少し進めてみましょう。
(第2図は▲4七銀まで)
第1図からの指し手 (1)

▲7九角 △5五歩
▲同歩 △同飛
▲5六歩 △5一飛
▲4六歩 △5四銀
▲4七銀 (第2図)
★CHECK★
ジッと5筋の歩を交換して△5四銀の形を築くのがポイント。
★好形5四銀★
とりあえず矢倉中飛車の破壊力を知ってもらうために先手は▲7九角から普通に組んでみます。
後手は5筋の歩を交換して△5四銀の形を築くのがポイント。
この形が非常に好形で、次に△5五歩や△6五歩などを突いて攻めていきます。
しかしすぐ仕掛けても7七銀、6七金、4七銀が手厚く構えているのでうまくいきません。そこで・・・
(第3図は△8五桂まで)
第2図からの指し手

△7四歩 ▲2六歩
△7三桂 ▲2五歩
△8五桂 (第3図)
★CHECK★
矢倉中飛車に限らず右桂を活用すれば攻めは一段とパワーアップする。
★攻めは飛車・角・銀・桂★
仕掛けをパワーアップするために8一の右桂を活用するのが第2のポイント。
△8五桂と跳ねた第3図は後手が主導権を奪って指しやすい局面になっています。
▲8六銀や▲6八銀なら△6五歩が厳しく、▲8八銀でもやはり△6五歩▲同歩△同銀(または△6六歩)が好調子です。
銀が逃げなければ当然「銀・桂交換」の駒得で十分な展開が得られます。
★MEMO(矢倉中飛車について)★
今の手順の中にも細かい変化はありますが、「矢倉中飛車」は大体このような感じの仕掛けになります。
部分的なポイントをいくつか挙げておきましょう。
 ・角のラインが大切なので▲2五歩に対して△3三銀とは上がらない(△3三角はある)。
 ・△7三桂は△8五桂と跳ねる以外に△6五歩▲同歩△同桂の狙いもある。
  (例えば先手が▲4七銀の代わりに▲5七銀の形なら△6五歩▲同歩△同桂が銀の両取りになる)。
 ・6一金もひとつ△6二金と上がっておくだけで全然違います(桂頭をカバーして、駒の打ち込む隙も少なくしている)。
他にも色々ありますが、実戦で試しながら理解を深めていく方が良いでしょう。
【矢倉中飛車VS居角作戦】
今度は先手が居角(8八角)で対抗する変化を見ます。
(第4図は▲4六角まで)
第1図からの指し手 (2)

▲2六歩 △5五歩
▲同歩 △同飛
▲5六歩 △5一飛
▲2五歩 △5四銀
▲5七銀 (第4図)
★CHECK★
先手は▲7九角と引かないで▲2六歩と伸ばしていく。角は8八の地点にいる方が受けやすい。
★飛車先を伸ばしていく★
どうやら▲7九角と引くのは後手の角のラインが強力過ぎて好ましくないようです。
先手の角は8八の地点にいた方が後手の猛攻を受けやすいので、角を引かず▲2六歩から飛車先を伸ばしてみましょう。
後手は先程と同じ様に5筋の歩を交換して△5四銀の形を築きます。
先手は▲5七銀と中央に上がって構えるのがポイント。
(第5図は△6二金まで)
第4図からの指し手

△7四歩 ▲2四歩
△同歩 ▲同飛
△2三歩 ▲2八飛
△6二金 (第5図)
★CHECK★
飛車先を交換して1歩を手にする。
★飛車先を交換する効果★
後手は△7四歩から右桂の活用を図りますが、先手は▲2四歩から飛車先を交換しておきます。
これにより後手は桂馬を跳ねる前に△6二金の一手が必要になってきます。
すぐに△7三桂とするのは先手の持ち駒に歩があるので▲7五歩△同歩▲7四歩が生じるからです。
この後、第5図からの先手の指し手に注目して下さい。
(第6図は▲6八銀左まで)
第5図からの指し手

▲7九玉 △7三桂
▲6八銀左 (第6図)
★CHECK★
▲7九玉〜▲6八銀左が好着想。
これで先手の角も働いてきた。
★好手6八銀左★
▲7九玉と寄せた後、▲6八銀左が好手です。この手の価値は、
  ・△8五桂が銀取りにならない
  ・△6五歩▲同歩△同桂が両取りにならない
  ・8八角が動きやすくなった
  ・中央(5七の地点)を手厚くした
などが挙げられます。おそらく知らないと浮かばない手順なので覚えておかれると良いでしょう。
しかし、仕掛けの権利はやはり後手にあります。形勢の良し悪しが出るのはこの後の指し手次第と言ったところです。
★MEMO(角のラインを生かす攻め)★
先程と同様、後手の攻めは△6五歩や△5五歩が中心になりますが仕掛けのタイミングは難しい。
すぐに決行するのもありますし、△3一玉や△1四歩などを入れてから仕掛けるのも有力です。
例えば第6図から△6五歩▲同歩△8八角成▲同玉△3三角などが一例。以下、
  (a)▲6六銀なら△6五銀
  (b)▲7七桂なら△6五桂
  (c)▲7七角なら△5五歩▲同歩△同銀▲5六歩△6六歩
と、角のラインを生かして攻めていくのが急所になります。
相当破壊力があるので先手も綿密な対策を用意しておかないと受け切るのは容易ではありません。
やはり先に仕掛けることができるというのは大きな魅力で、アマチュア間では非常に人気がある戦法です。
※「矢倉中飛車」について詳しく知りたい方は「康光流現代矢倉(第3巻)」を参考にして下さい。


戦法インデックスへ戻る