§64.米長流急戦矢倉
昨年12月、米長邦雄永世棋聖が40年に渡る現役生活にピリオドを打たれました。その力強い指し回しに魅了された方も多い米長将棋が、以前四冠を保持する原動力となったのがこの「米長流急戦矢倉」です。
今回もベースとなるのは「居角(2二角)」。しかし飛車の位置、銀の使い方は前回までとは大きく異なります。
【米長流急戦矢倉の駒組み】
「速攻型」と「4四銀型」の2パターンの駒組みがあります。
(第1図は△6五歩まで)
冒頭図からの指し手 (1)

△6四歩 ▲2六歩
△7三桂 ▲2五歩
△6五歩 (第1図)
★CHECK★
米長流は右桂の活用がポイント。
★駒組みA・速攻型★
△6四歩〜△7三桂と右桂の活用を図り、すぐに△6五歩と仕掛けていくのが「速攻型」の駒組み。
「矢倉中飛車」や「6二飛戦法」と比べてかなり覚えやすいと思います。
但し飛車、角、桂馬だけでの仕掛けなので一気に潰すという感じにはなりませんが、意外とうるさい攻めなので第1図以下の攻防は後でジックリと見ていきましょう。
(第2図は△4四銀まで)
冒頭図からの指し手 (2)

△6四歩 ▲2六歩
△7三桂 ▲2五歩
△3三銀 ▲3六歩
△6三銀 ▲3七銀
△4四銀 (第2図)
★CHECK★
△4四銀の前に△6三銀と上がっておくのが有力。この一手が入れば更に力強い攻めができます。
★駒組みB・4四銀型★
こちらがもうひとつの駒組み「4四銀型」。
▲2五歩までは(1)と同じですが△3三銀と上がって一度2筋を受けておくのがポイント。
注目したいのは最後の△4四銀で、この後は△5五歩から仕掛けを決行します。
4二銀がいないので玉の守りは薄くなりますが、銀が参加している分攻撃力は(1)よりも上です。
どちらを選ぶかは好みと言ったところでしょう。
★MEMO(ウソ矢倉)★
初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩と後手が振り飛車模様の出だしを見せた後、一転して飛車先不突き矢倉に組んでいく作戦があります(参考1図)。
これは「ウソ矢倉」と呼ばれる指し方で、通常の矢倉の△8四歩を他の手に代えて少しでも有利に進めようとするのが狙い。
これに対抗する先手の手段も色々ありますが「米長流急戦矢倉」もそのひとつ。
先手番で扱えば本譜の後手番のときよりも一手早く仕掛けることになるので、より大きな戦果が期待できます。
(参考1図は△6二銀まで)
【米長流急戦矢倉の戦い・その1】
まずは「速攻型」の実戦例を見ていきましょう。
(再掲第1図は△6五歩まで)
第1図からの指し手

▲6五同歩 △同桂
▲6六銀 △8六歩
▲同歩 △同飛
▲8七歩 △8一飛 (第3図)
★CHECK★
△6五桂は簡単には取られない。これも2二角の存在が大きいからだ。
★軽快な桂跳ね★
第1図で△6五歩と仕掛けた後の展開を見ていきましょう。
▲6五同歩と取った手に対して△同桂と軽快に跳ねていきます。
▲8八銀と逃げれば△6六歩と打って後手が指しやすくなるので先手は▲6六銀と上がります。
桂取りになっていますが慌てて受ける必要はありません。何故なら▲6五銀と桂馬を取るのは△9九角成があるから。
よって後手は△8六歩から飛車先の歩を交換しておきます。
(第3図は△8一飛まで)
第3図からの指し手

▲2四歩 △同歩
▲同飛 △2三歩
▲2八飛 △7五歩
▲同歩 △8六歩
▲同歩 △6六角
▲同金 △8六飛 (第4図)
★CHECK★
これは後手の成功例。
細かい変化はMEMOで。
★第二の急所△7五歩★
第3図では▲2四歩や▲5五歩など色々ありますが、ここでは米長流の狙いを知っておくために後手の成功例を見ておきます。
△7五歩と突くのが急所の一手です。この歩を突き捨てることにより持ち駒の歩を△7七歩と打つなど活用することができます。
本譜は△7五同歩と取りましたがこれは悪手。△8六歩の合わせから第4図まで進み「十字飛車」が決まりました。
ここまでうまくは進まないでしょうが、とりあえずは後手は第3図以降△7五歩と突いていくのが急所ということを心得ておいて下さい。
(第4図は△8六飛まで)
★MEMO(争点は角のライン)★
第3図で先手は▲2四歩△同歩▲同角△2三歩▲4六角と好位置に移動させるのが有力(次に▲5五歩狙い)。
以下は△5三銀左などで一局の将棋です。
他には単に▲5五歩などもあり、これには後手は桂馬を取られないよう△6四歩と打っておく展開になります。
やはり先手は2二角の利きをどれだけ緩和できるかが受けのポイントになりそうです。
【米長流急戦矢倉の戦い・その2】
次に「4四銀型」の実戦例を見ていきましょう。
(再掲第2図は△4四銀まで)
第2図からの指し手

▲2四歩 △同歩
▲同角 △2三歩
▲6八角 △5五歩
▲同歩 △6五歩 (第5図)
★CHECK★
△2三歩に▲1五角と引く手もある。
★仕掛ける★
第2図の△4四銀の後の実戦例を見ていきましょう。
先手は▲2四歩から飛車先の歩を交換しておくのが一番自然な手順。
▲6八角と一息ついたところで後手は△5五歩〜△6五歩と仕掛けます。
5筋の突き捨ては4四銀を動きやすくする手筋。これでいつでも△5五銀と出ることができます。
(第5図は△6五歩まで)
第5図からの指し手

▲6五同歩 △8六歩
▲同歩 △6五桂
▲6六銀 △6四銀 (第6図)
★CHECK★
8筋の突き捨ては後ですぐ△8六飛と走れるようにした手筋。先手の▲9五角と出る変化も消している。
★中央を制圧★
第5図は△5五銀〜△6六銀の狙いがあるので▲6五同歩と素直に応じます。
ここで△5五銀と出る手もありますが△8六歩〜△6五桂がお勧めの順。
▲8八銀なら今度こそ△5五銀と出て先手陣は崩壊寸前です。
▲6六銀と出る手には△6四銀と力を溜めて次に△5五銀左を狙うのが好判断。
第6図は中央を制圧した後手が指しやすい形勢です。
少し難しい順だったかも知れませんが、この「4四銀型」は角のライン生かして4四銀を働かせることがポイントになります。
(第6図は△6四銀まで)
★MEMO(早囲いVS米長流)★
参考2図は先手が「早囲い」で組んだ形に対しての米長流の変化。「早囲い」とは玉が▲6八玉〜▲7八玉と移動する組み方のことです。
第5図と殆ど同じですが、この場合は▲6五同歩なら△5五銀と出る手が決まりそうです。以下▲5六歩△6六歩▲5七金△6五桂▲5五歩△5七桂成▲同銀△6七金が一例。最後の△6七金が王手になるのが先手の泣き所です。
やはり争点が5五や6六の地点なので「早囲い」は非常に危険なようです。
序盤の組み方にも細心の注意を払いましょう。
(参考2図は△6五歩まで)
さすがに四冠王の原動力となった戦法だけあって内容も非常に高度です。
受ける側も中途半端な対策では簡単に潰されてしまうので事前の十分な研究が必要とも言えます。
※「米長流急戦矢倉」について詳しく知りたい方は「康光流現代矢倉(第3巻)」を参考にして下さい。


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