「5手詰ハンドブック」発売記念
浦野真彦七段インタビュー
浦野真彦七段 【Profile】
 去る2月28日(土)に浦野真彦七段の新刊本「5手詰ハンドブック」が日本将棋連盟
から発売されました。
 「自分のやりたい事を実現できた自信作」と語る浦野七段にインタビューしました。

ー新刊発売おめでとうございます。今の感想はいかがですか?
「自信作です!大変満足してます。いい本が出来ました。」
ーいつくらいから準備していたんですか?
「去年の夏に最初のお話がありました。詰将棋の問題集は将棋世界の付録で2回目やって
いるので、もう1回やりたいなとは思っていました。詰将棋の本は以前から出していただく機
会があれば、とは思っていました。問題はその付録の問題とか新たに作ったものとか、全部
で250問くらいの中から200問を選びました。」
ーコンセプトはどうして決まりましたか?
「作品、というか問題に気を配ったものを作りたかった。『終盤で出てきそうな筋』を中心に、
打ち歩詰め打開の不成や両王手など、実戦での出現頻度が少ないものは外しました。
また、『見た目で解きやすい』ものを意識した配置にして、駒数も10枚以内にこだわりました。
例えば、問題図で大駒(角や飛車)の前に歩があったりするような不自然な配置のものは避
けました。」
ー他にこだわったところはありますか?
 「最初のルール解説です。今までの詰将棋の本は、箇条書きで詰将棋のルールを書いて
あるだけだった。でも、詰将棋をやり始めたばかりの人は、王様を詰ます時に、と金で入って
も金で入っても詰み、という場面ではどちらでも正解。という事に(答えが二つあるので、正解
ではないのではないか?)と戸惑いを感じている人が結構いると思う。今までの本ではその点
をあまり説明していない。そういったところが気になって、最初に図面を入れて丁寧に詰将棋
のルール説明を載せました。この説明もいろんな人に協力してもらって、ようやく自分の意図
したものになりました。
 また、よくある「答えが問題の裏に透ける」という事がないようにしたかったので、問題図の
後に答えがあるという形をやめて、見開きで問題のページ(4問)、答えのページ(4問)とい
うようにしました。とにかく、作家の立場ではなくて解答者の側で考えようと取り組みました。」
ー「5手詰」にこだわった理由は?
「5手ならば、ほとんどの”詰みの筋”を問題に盛り込める。3手では短いし、7手では長い。」
ー綺麗な装丁ですね。
「これは『羽生の頭脳』や『島ノート』のデザインをしたデザイナーの土方芳枝さんに頼み込ん
でデザインしてもらいました。電車の中で見てもおかしくないように、という事と”しゃれたパズ
ル=詰将棋”というイメージを土方さんに伝えて、考えてもらいました。
 また名称もいろいろ悩みました。50通りくらい考えたんですよ。森(信雄六段)さんの『あっ
と驚く三手詰め』『なめたらあかん三手五手』(いずれも講談社)が凄すぎる(=素晴らしいネ
ーミング)んでねえ…。」
※衝撃の手筋

▲2三銀、△1三玉、
▲1二銀成!△同玉
(同香でも)、▲2三金
まで5手詰め
ー自信作は?
「自信作というか、印象に残る問題は125問目。今期の順位戦(B2・3回戦)の行方(尚史)
六段との将棋をヒントに作りました。難しい局面だなと思っていたら、あっさり寄せられていた。
ひどいんで、問題にしました(笑)。」
ー詰将棋との出会いについて聞かせて下さい。
「最初は、師匠(故・中井捨吉八段)の教室で将棋世界の『詰将棋サロン』を解いているくら
いでした。何かのきっかけで1問作ってみようとなって、作ってみたのが創作の始めですか
ね。それからは詰将棋パラダイスを見て、どんどんその魅力に引き込まれました。」
※若島正さん
 京都大学大学院教授。
詰将棋作家・詰めチェス
作家、マスターとしても有
名な方。下の上田さんと
ともに羽生名人・谷川王
位らトッププロがその作品
を絶賛している。
※上田吉一さん
 同じく京都の詰将棋作
家。『極光21』(河出書
房・税別:1500円)の作
品集などで知られる。
 詰めチェス以外に様々
な将棋パズルを創出して
いる。
ー思い出の残っている作品はありますか。
「作品というか、攻め方で▲2三銀と打って▲1二銀成と捨てる筋の問題がありますよね(右
上図)。あれは衝撃的でしたね。」
ー好きな詰将棋作家・作品を教えて下さい。
「1人を選べと言われれば、若島正さん、作品の『盤上のファンタジア』(河出書房・税別:
1500円)は最高傑作ですね。2人ならば上田吉一さん。作品は一題選ぶとすれば、駒場
和男さんの『父帰る』という作品ですね。これは凄いの一言、この作品から詰将棋にハマり
ました。」
ーどう”ハマった”んですか?
「この問題は最初の配置で5五に王様がいて、そこからスタート。最後はまた5五に戻って来
て詰むという都詰め。奨励会の時にこの作品に出会って、それから詰将棋の作品創作にハ
マりました。将棋の勉強は全然しませんでしたね。寝ても覚めてもという感じで・・・。
 その頃、僕が作った作品にはこんな(↓)のもあります。
 作っている時は夢中で、食事を取らない時もあった。食事していてもこれが昼ごはんなの
か晩ごはんなのか分からない、というくらいでした。」
 新婚時代も奥さんが寝たのを見計らって徹夜で創作していた事もありました。


 将棋マガジンにも
かつて掲載された事
がある。奨励会当時
の作品。
 残念ながら▲1二と、
から入って23手で詰
みがある(余詰め)。こ
のインタビュー前に発
見。
 この余詰めに浦野七
段は「ははー、これは
ひどいねー(笑)」

※都詰め
 玉が盤の中央で4枚の
駒で詰め上がる煙詰↓
※煙詰め
 様々な駒を配置し(厳密
に言えば全ての駒だそうで
すが…)、詰めて行く途中
で1枚1枚取られていき、
最後は、玉と攻方2枚の
合計3枚駒だけになる趣
向の詰将棋。
ーどんな時に創作しますか?また、今、構想中のものはありますか?
「特に今はないですね。本が出たばかりなんで…。いずれは作品集をという思いはあります。
それには100問くらい必要なんでしょうが、自分の中で、これは水準以上と思えるものは、今
のところ6割(60問)くらいしかないですね。創作の場所・環境はあんまり意識しないです。」
※詰将棋パラダイス
 詰将棋の専門誌
(月刊誌)。詳細は↓
 【ホームページ】
を、現在、浦野七段
の懸賞問題出題中
です。
詰将棋パラダイス・水上編集長からは長編の期待があるようですが。
「そうですね、前述した『父帰る』のような作品を残したいんですけど、なかなかね…」
ー詰将棋の楽しみ方を教えて下さい。
「パズルの一種と思って、気軽に肩の力を抜いて考えてもらいたい。この本(新刊)はその
楽しさを知ってもらえるように作りました。
 将棋大会でアマチュアの方の将棋を見ていると、高段者の人でも比較的簡単な詰みを
逃している。でも『詰将棋を・・・』と言っても逆に構えられてしまう。だから、簡単なもので無
理のない問題をたくさん解いて欲しい。分からなかったら答えを見てもいいし、極端な話、
答えから見て手順を追っかけてもいいと思う。要するに反復して、その筋を無理なく体に覚
えさせる事が大切なんですね。」
ー将棋世界の「詰将棋サロン」の選題者をしていますが、苦労する点などありますか? ※棋王戦ベスト4
 予選を勝ち抜き、
 堀口一六段、屋敷
 八段、井上八段を
 連破しベスト4進出。
 以降は谷川王位、
 深浦朝日に敗れ、
 挑戦権獲得はなら
 なかった。
 ▼トーナメント表
「好きなので、苦労はないですね。余詰めが見つかった問題でも、良い作品には『これはこ
うすれば…』というように修正するのではなく、アドバイスだけを書いて送り返します。”文通”
ですね(笑)、文通相手が結構増えていますが・・・。前任者(谷川浩司王位)もそう言って
いましたが、誰よりも先に作品を見れる”特権”が嬉しいですね。
ー昨年は棋王戦でベスト4に進出しましたが、いかがでしたか?
 「今だから話ますけど、この本を出す事になった時は『まあ時間もあるから、やりましょか』
的な気持ちで引き受けた。ところが、いざ問題作成・選題となった時にベスト4に勝ち進ん
だ。最初の予定では原稿締切り日から逆算して、1日原稿用紙1枚のペースで出来る予
定だったのが、1日4枚になって来て、だんだん締め切りが押し迫って来た。
 最後に負けた時(敗者復活戦・1回戦、vs深浦康市朝日オープン選手権者戦:12/2)
は、変な話なんですけどホッとした、というのが本音なんです。締切りも年明けに延ばして
もらって、ようやく完成しました。」
ーマイ・ブームやリラックス、リ・フレッシュ方法はありますか? ※ひまわり
 の詳細は関西女性
普及指導員のページ
「どかんと関西」の”大
好き関西棋士”のバッ
クナンバーをご覧下さい。
「そうでうね。家で飼ってる猫ですね。”ひまわり”と名付けた黒いメス猫なんですが、ある
日ふと家への帰り道で捨てられていた。親猫も行き場も無いので、結局家で買うことにな
ったんです。ペットを飼うのは初めてなので、どうかなと思ってたんやけど、もう慣れて今
は気分転換というか、”癒し”になってますね。」
ー今後の抱負・目標を聞かせて下さい。 ※看寿賞
 年間を通じて、各専門
誌に掲載された作品の
中から、最も優秀な作品
に贈られる賞。
 全日本詰将棋連盟が
短編・中編・長編・特別
の部門ごとに選定する。
看寿とは『将棋図巧』(
古今で最も素晴らしい作
品集と言われる)の伊藤
看寿からとったもの。
 棋士では谷川王位がH
9年・長編、内藤九段が、
H10年・長編で受賞。浦
野七段はS58年・短編、
H6年長編で受賞してい
る。
「詰将棋は、将棋世界のサロンの選題や看寿賞の選考などがあります。特に看寿賞は、
他にも相応しい人がいるので…と辞退しようかと思った時もありましたが、自分は他の人
に比べて時間がある。だから出来るだけたくさんの作品を見る事が出来る。そして棋士
が選考している事で、詰将棋愛好家以外の人にも関心を持ってもらえるんじゃないかと
思ってやっています。
 選考はたくさんの問題の中から、他の6人の選考委員の方とメールでやりとりしながら
行っています。今後もそういう形で詰将棋界のお役に立てればと思います。
 指す方では、昨年連勝したあたりから、定跡や流行にとらわれず『いろいろ自分の指
したい手、形を指す』という感じで指して行きたい。今回の本もそうなんですが、自分の
良いと感じた事、こうすればファンの人に楽しんでもらえるのではないか、という事を大切
にして行きたいですね。」

ー今日はお疲れのところ、ありがとうございました。
【After the Interview】
 インタビューを行った日は浦野七段はNHK杯予選の対局日。このインタビューはその
直後に行ったのですが、3局(2局+千日手指し直し)指した後にも関わらず、たくさんの
お話をしていただきました。
 一言一言からこの新刊へのこだわりと満足感が感じられました。それは本を読んでい
ただければ十分に分かると思います。「詰将棋の教科書みたいになれば…」と言うだけ
に、子供から女性・大人、または詰将棋好き・嫌いに関わらず、みなさんに「解く楽しみ」
を感じてもらえる一冊です。
 現在、オンラインショップでは浦野七段の直筆サイン入りで発売中です。値段も
1,000円(税別)とお手軽な価格ですので、ぜひ、お買い求め下さい。
                      〔インタビュー・文責 ホームページスタッフ:出原〕


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